「配偶者ビザ(正しくは「日本人の配偶者等」という在留資格)の申請を自分で進めたいけど、なんだか難しそう…」そうお考えではありませんか?
確かに、自分で申請すれば専門家への依頼費用を節約できます。しかし、書類準備の手間や時間がかかったり、もし不許可になったら…と不安に感じるかもしれません。一方で、専門家に依頼する場合でも、ビザの更新は今後も続くため、ある程度の知識は身につけておきたいですよね。
この記事では、配偶者ビザを自分で申請する場合のメリット・デメリット、そして結婚からビザ申請までの基本的な流れを分かりやすくまとめました。「自分で申請するのは避けた方が良いケース」についても触れていますので、ご自身の状況に合わせて最適な方法を検討しましょう。
配偶者ビザとは?
配偶者ビザは、日本人と結婚した外国人が日本で暮らすために必要なビザです。このビザの大きな特徴は、日本での就労活動に制限がないこと。また、将来的に永住許可や日本国籍の取得(帰化)を考える際にも、条件が有利になることがあります。
大切なポイント:
- 日本とパートナーの母国の両方で法律上の結婚手続きを終え、役所に婚姻届を提出して受理されても、自動的に配偶者ビザがもらえるわけではありません。
- 結婚が成立した後、出入国在留管理庁(入管)で配偶者ビザの許可を得る必要があります。
配偶者ビザの申請は、主に「自分たちのことを説明する」作業が中心です。そのため、例えば会社の経営・管理を行うためのビザなど、他の種類と比べると、ご自身で申請しやすいビザと言えるでしょう。
こんな方には自分で申請するのもアリかも:
- 平日の昼間に、入管へ行ったり書類を集めたりする時間を確保できる方
- 書類作成や情報収集が得意な方
一方、こんな場合は専門家への依頼も検討しましょう:
- 役所への申請や書類作成に苦手意識がある方
- 仕事が忙しく、平日の昼間に何度も入管へ行く時間が取れない方
- 在留期限が迫っていて、急いで手続きを進める必要がある方
配偶者ビザを自分で申請するメリット・デメリット
ご自身で申請手続きを行うことには、良い点もあれば注意したい点もあります。
【メリット】
- 費用の節約ができる 自分で申請する場合、専門家(行政書士など)への依頼費用がかかりません。必要なのは、許可が下りた際の収入印紙代(4,000円)と、書類の発行手数料くらいです。専門家に依頼する場合、一般的に8万円~15万円程度の報酬が必要となるため、この費用を抑えられます。
- プライバシーを守れる 申請の際には、出会いの経緯や現在の生活状況など、かなりプライベートな情報を伝える必要があります。自分で申請すれば、これらの情報を専門家とはいえ他人に詳しく話す必要がありません。
- 日本の滞在ルール(入管法)に詳しくなれる 申請準備を通して、日本の出入国管理に関する法律(入管法)について自然と学ぶことになります。この知識は、ビザを取得した後も日本で生活していく上で非常に役立ちます。場合によっては、法律違反で国外退去となる可能性もあるため、大切なパートナーと共に日本で暮らす上で知っておいて損はありません。
【デメリット】
- 手間と時間がかかる 初めての申請では、どんな書類が必要で、どう書けば良いのか、不安に感じることも多いでしょう。インターネットなどで情報は得られますが、自分の状況に完全に一致するケースは稀です。個別の事情に合わせて提出書類を選ぶのは、ビザ申請で最も難しい部分の一つです。もし審査中に問題が見つかれば、指定された期間内(通常2週間以内)に追加の書類を提出しなければならないこともあります。
- 不許可になるリスクがある 専門知識がないまま申請すると、書類に不備があったり、内容が不十分だったりする可能性があります。小さなミスがすぐに不許可に繋がるわけではありませんが、修正のために何度も呼び出されたり、追加書類を求められたりして、余計に手間がかかることがあります。もしミスが多かったり、審査のポイントからズレた書類を出してしまったりすると、総合的に判断されて不許可となる可能性もゼロではありません。一度申請してしまった内容は、結果が出てからでは基本的に変更できないため、注意が必要です。
- ビザ取得までに時間が長引く可能性がある 必要な書類を自分で調べて役所などへ取りに行くため、書類準備に時間がかかります。スムーズに進めば良いのですが、手探りで進めるため、思ったより時間がかかってしまうことも考えられます。さらに入管から追加の書類提出を求められた場合、さらに時間と手間がかかることもあります。
配偶者ビザ取得までの流れ:結婚から申請まで
国際結婚が成立したら、次はいよいよ配偶者ビザの申請準備です。手続きは、外国人配偶者が「海外にいる」か「日本国内にすでに他のビザで滞在している」かで異なります。
ここでは、特に手続きが複雑になる**「海外にいる外国人配偶者を日本に呼び寄せるケース」**を中心に説明します。この場合、まず「在留資格認定証明書」というものを入管に申請し、交付してもらう必要があります。これは、「この外国人は日本に滞在する条件を満たしていますよ」ということを入管が事前に審査し、証明してくれる書類です。
【ステップ1】 国際結婚の手続きを完了させる
配偶者ビザを申請する大前提として、日本と相手の国の両方で法律上の婚姻関係が成立している必要があります。
- 原則、両国での手続きが必要: 基本的には、日本と配偶者の母国の両方で結婚手続きを行う必要があります。ただし、中国、アメリカ、オーストラリアなど一部の国では、日本での手続きだけで済む場合もあります。
- 事前にしっかり調査を: どちらの国で先に手続きをするか、それぞれどんな書類が必要かなどを事前に調べておくことが非常に重要です。
国際結婚手続きの進め方(例:相手国で先に婚姻手続きをする場合)
- 日本の役所で「婚姻要件具備証明書(独身証明書)」を取得: 日本人側が用意します。
- 外務省で認証を受ける: 取得した証明書に日本の外務省のお墨付きをもらいます(郵送も可)。
- (必要な場合)日本にある相手国の大使館・領事館で認証(公印確認)を受ける。
- 相手国で、その国の法律に基づいて結婚手続きを行う。
- 相手国で結婚したことを証明する書類(結婚証明書など)を取得する。
- 日本の役所(市区町村役場)に婚姻届を提出する: 相手国の結婚証明書などを添付します。
(補足)日本で先に婚姻手続きをする場合: 日本で婚姻届が受理された後、その証明書類(戸籍謄本や婚姻届受理証明書など)を相手の国に提出し、相手国側の手続きを進めます。国によっては、日本での婚姻が成立していれば、相手国での手続きが不要な場合もあります。
【ステップ2】 配偶者ビザ(在留資格認定証明書)の申請
有効な結婚が成立したら、いよいよ外国人配偶者を日本に呼び寄せるための「在留資格認定証明書」の交付申請を出入国在留管理庁(入管)に行います。この証明書が交付されれば、海外の日本大使館・領事館でのビザ発給がスムーズに進み、日本への入国が許可されやすくなります。
注意!こんな場合は専門家への依頼を検討
以下のようなケースでは、ご自身で申請するよりも専門家に依頼した方が良い結果に繋がりやすい場合があります。
- 結婚までの交際期間が短い場合
- 夫婦の年齢差が大きい場合
- 離婚歴が多い場合
- 収入面に不安がある場合(安定した生活を送れるかどうかがポイントになります)
- 過去にオーバーステイなどの入管法違反がある場合
上記のようなケースでは、なぜ結婚に至ったのか、今後どのように安定した生活を送るのかなどを、より丁寧に説明し、証拠となる資料をしっかりと集める必要があります。こうした場合、専門家のアドバイスを受けながら進める方が安心です。
配偶者ビザの申請は、ご夫婦の日本での新しい生活を始めるための大切な一歩です。審査のポイントをしっかり理解し、計画的に準備を進めていきましょう。